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2023/07/10

iPS細胞の維持培養から疾患モデルまで ―iPS細胞を用いた応用研究の進め方―

  • 細胞分離
  • 用途別細胞培養

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近年のヒト人工多能性幹(iPS)細胞とその関連技術の目覚ましい発展によって、これまでヒトでは困難だった研究手法が可能になり幅広い分野で応用が進んでおります。たとえば、初代細胞や体性幹細胞の入手が難しい組織の場合、iPS細胞であれば大量に培養してin vitroでモデルを作製することができます。また、iPS細胞のゲノムを編集することで、遺伝子の機能や表現型への影響を解析することが可能です。さらに、iPS細胞を3次元のin vitro器官培養系であるオルガノイドに展開することで、よりin vivoに近い構造と機能を再現することができます。これにより、動物モデルにおける課題(ヒトとの生物学的関連性や、倫理上の問題)も克服できます。

本稿では、ヒトiPS細胞を応用する研究の実例、研究ワークフロー、そして各ステップをサポートするSTEMCELL Technologies社の製品をご紹介します。
※STEMCELL Technologies社(カナダ)は、ヒト多能性幹(ESおよびiPS)細胞の培養における世界的標準「mTeSR™1」培地を長年にわたり供給するだけでなく、幹細胞研究ワークフローを支える研究用製品を数多く生み出しています。

動画のご紹介

ヒト多能性幹細胞(hPSC)の生物学の概要、hPSCの品質と特性を評価する方法、プレートコーティング、培地の選択肢、継代から凍結保存までhPSC培養を維持する方法を動画で紹介
Complete a Virtual Training Course on Pluripotent Stem Cell Quality and Maintenance
(動画の視聴にはSTEMCELL Technologies社ウェブサイトにて登録が必要です)

iPS細胞の応用研究事例

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ヒトの神経疾患は急速に進んでいる研究分野の一つですが、iPS細胞由来ニューロンから作製される疾患モデルが大きく貢献しています。また、iPS細胞から作製されるミニ臓器“オルガノイド”は、in vivoの高次構造や機能を再現できるまで進歩しています。最近では新型コロナウイルスの研究にも、iPS細胞由来の分化細胞やオルガノイドが欠かせないツールとなっております。今後は創薬や毒性のスクリーニング、そして再生医療への応用が期待されます。
iPS細胞を応用した研究事例の一部をご紹介します。

iPS細胞研究のワークフロー

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体細胞を初期化してiPS細胞株を樹立し、維持培養、目的の細胞への分化を経てさまざまなアプリケーションに用いるまでの研究ワークフローを図にまとめました。iPS細胞はワークフローの全過程を通して遺伝的異常を獲得する可能性が高く、その場合はアプリケーションにも影響を及ぼすため、適切な品質管理と確認を実施することが重要です。

←クリックすると大きく表示されます

以下ではワークフローの各ステップとサポート製品をご紹介します。

初期化

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ヒトiPS細胞は、主要な再プログラム化因子の一時的な過剰発現を介して、体細胞を多能性状態に初期化することにより生成されます。

  • リプログラミング
    皮膚、尿、血液からのリプログラミング: ReproTeSR, TeSR-E7
    リプログラミング用RNAベクター: ReproRNA-OKSGM

維持

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ヒトiPS(およびES)細胞は、人体の全ての細胞タイプを生成する能力があり、疾患モデリング、薬剤スクリーニング、細胞療法などの研究に使用できます。一貫性あるin vitroの細胞培養条件と取り扱い技術によって、高品質に維持されたiPS細胞を使用することが重要です。

(参照:幹細胞(ES/iPS細胞)の培養ワークフローにおける各ステップのポイント・注意点

  • スケールアップ、浮遊培養(3D)
    シンプルな流加培養でスケールアップ: mTeSR 3D
    動物性成分フリー、低タンパク条件でスケールアップ: TeSR-E8 3D
  • 凍結保存
    動物性成分フリー、タンパクフリーで凍結保存: CryoStor CS
    細胞塊(クランプ)を血清フリーで凍結保存: mFreSR

ゲノム編集

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ヒトiPS(およびES)細胞は疾患の研究に大きな希望をもたらしています。ゲノム編集ツールによって、iPS細胞に疾患特異的な変異の導入、または、遺伝的異常の修正を行ってDNA変異体を生成すれば、組織に分化させた際、ヒト疾患のより正確なモデル化が可能になります。ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、さらにclustered regularly interspaced short palindromic repeat(CRISPR)といった遺伝子ツールの進歩は、ゲノム編集の容易さと効率を向上させました。

ナイーブ型

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ヒトiPS(およびES)細胞は、さまざまな多能性状態のスペクトルに沿って維持することができます。In vitroでは、特定の組み合わせのサイトカインまたは小分子を含有する培地が、細胞をプライム型、あるいはより自己複製能と分化能の高いナイーブ型の状態に維持することが報告されています。近年、複数の研究グループによって、従来のプライム型iPS細胞を「基底」または「ナイーブ」状態に移行および維持できる培養条件が特定されています。

品質管理

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ヒトiPS(およびES)細胞は、ルーチンの培養をはじめ、ゲノム編集などさまざまな局面で遺伝的変異を獲得する可能性があります。
研究ワークフロー全体を通して、適切に細胞を取り扱うことと同時に、iPS細胞の品質を確認することが重要です。

(参照:いま見直すべき、ヒトES/iPS細胞の「品質管理」

分化、オルガノイド

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ヒトiPS(およびES)細胞由来の分化細胞、および3次元培養したオルガノイドは、創薬、細胞療法、疾患などの研究に有用な、生理学的関連性の高いモデルを提供します。複数のiPS細胞株にわたって安定した高効率な分化を実現するために、血清などの変動要素を回避した培養条件が選ばれています。

(参照:ES/iPS細胞からさまざまな細胞への分化誘導

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