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研究者の声

2017/12/18

STEMdiff APEL2によるヒトiPS細胞の腎臓分化 研究者の声【4】

  • 用途別細胞培養

ヒト多能性幹細胞からの腎臓細胞・腎臓オルガノイドへの分化の研究を精力的に進めておられる髙里 実 博士に、STEMCELL Technologies社の汎用性分化培地「STEMdiff APEL2 Medium」を用いて行ったご研究の内容を伺いました。

研究者紹介

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髙里 実 博士

国立研究開発法人 理化学研究所
生命機能科学研究センター
ヒト器官形成研究チーム チームリーダー

 

経歴

2002年 東京大学理学部生物学科 卒業

2008年 東京大学大学院理学系研究科生物科学科 博士課程修了

2009年 オーストラリア クイーンズランド大学 研究員

2015年 オーストラリア マードック小児研究所 上級研究員

2016年 現職

研究目的・内容

研究目的

ヒト多能性幹細胞の分化誘導系を利用した、移植可能な腎臓の構築および三次元組織の発生機構の解明

研究内容

成人の腎臓には幹細胞が存在しないため、一度末期腎不全に陥ると自然に治癒することはなく、人工透析を余儀なくされます。
このような中、腎移植に相当するような新しい根本治療法の開発に対して強い社会的要請があります。
そこで我々は、ヒト多能性幹細胞の分化制御を利用して、腎臓を人工的に作り出す研究を行っています。
具体的には、これまでに開発した腎臓オルガノイドの作製系をブラッシュアップし、三次元腎臓組織の再現性を移植可能なレベルまで高める研究、および分化誘導過程の細胞の挙動を試験管内で詳しく観察することで、ヒトの中胚葉系臓器や腎臓の発生メカニズムを解明する研究を行っています。

インタビュー

STEMdiff APEL2はどのようなご実験に使われていますか?

ヒト多能性幹細胞を二次元培養下で中胚葉へと分化させ、更に腎臓オルガノイドを形成させるための基礎培地として使用しています。

STEMdiff APEL2を選択された目的と、理由を教えてください。

元々、ヒトES細胞の血球細胞への分化誘導を目的として開発された培地でありますが、腎臓も同様に中胚葉系の器官だからです。
また、レシピが論文で公開されており、ゼノフリーな培地であることが保証されているためです。 

STEMdiff APEL2を使うことでどんなメリットがありましたか?

自作する手間が省けました。また、自作の培地と比較して分化細胞の生存性が向上しました。

研究結果

ヒトiPS細胞から作製した腎臓オルガノイドは、集合管から遠位尿細管、ヘンレのわな、近位尿細管、糸球体に至るまでのすべてのセグメントを持つネフロンを有し、
血管系や腎間質組織も同時に発生していた。腎臓オルガノイドの転写産物プロファイルは妊娠3ヶ月目のヒト胎児腎臓と近似していた。
腎臓オルガノイドの内部で発生した近位尿細管はエンドサイトーシスによるタンパク質の再吸収が可能で、尿細管としての機能性を示した。
さらに、腎毒性を持つ薬剤であるCisplatinを処理したところ、近位尿細管特異的な細胞死を確認した。
腎臓オルガノイドは将来的に、新薬の腎毒性テストや、腎病態モデルの確立、細胞療法などに応用が期待できるものであった。

ヒト多能性幹細胞から作成した腎臓オルガノイド

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直径約5mm、赤:糸球体、青:近位尿細管、黄:遠位尿細管・集合管(写真ご提供:髙里 実 博士)

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