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ラーニングコーナー

2024/05/16

神経研究に役立つ細胞培養アプリケーション

  • 用途別細胞培養

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神経研究に役立つ細胞培養アプリケーションをご紹介します。ニューロンの3D培養(オルガノイド、アセンブロイド)、共培養、電気活動測定に関するプロトコルや、研究発表ポスター、研究者による解説動画(ウェビナー)などをご覧ください。
なお、掲載した情報は一部です。さらに詳しく知りたい方は冊子「神経研究のための培養ガイドブック」もご参照ください:
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「STEMdiff™分化培地」について
本稿で紹介するプロトコルは、STEMCELL Technologies 社のSTEMdiff™分化培地を使用しています。
STEMdiff™分化培地は、さまざまなヒト多能性幹細胞(human pluripotent stem cell;hPSC)株から高品質なヒト神経モデルをin vitroで作製できる利点を備えています。多様なニューロンやグリア細胞への再現性の高い分化、および3 次元の均一なオルガノイドの樹立をサポートし、分化後の共培養にも使用できます。

脳・神経オルガノイド、アセンブロイドの樹立

オルガノイドとは目的とする臓器の主要な特徴の一部をもつ3次元(3D)の組織です。ヒトの脳・神経オルガノイドは、実用的および倫理的な観点から、初代細胞や摘出した組織ではなく多能性幹細胞(hPSC)を分化させて樹立します。樹立したヒトの脳・神経オルガノイドは、脳の発生中の細胞組成と3D 構造を再現できるため、ヒト中枢神経系に特有の発生過程や神経疾患の研究モデルとして重要です。

アセンブロイド(AssemBloid™)はオルガノイドの共培養系です。複数のオルガノイドの融合またはオルガノイドへの他の細胞の取り込みによって樹立され、神経系をより高次元にモデル化します。たとえば、異なる脳領域特異的オルガノイドを融合させたアセンブロイドは脳領域間相互作用モデルとして、脳オルガノイドにミクログリアを取り込ませたアセンブロイドは神経炎症モデルとして有用です。

プロトコル

STEMdiff™分化培地を使用した、オルガノイドとアセンブロイドの培養プロトコルです。

概要 画像をクリックすると拡大表示できます

大脳オルガノイドの培養
ヒト多能性幹細胞(hPSC)からSTEMdiff™ Cerebral Organoid Kit で大脳オルガノイドを分化させます。STEMdiff™ Cerebral Organoid Kit は胚様体(embryoid body; EB)の形成から大脳オルガノイド成熟までサポートしています。

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詳細を見る(STEMCELL Technologies社サイトへリンク)

脳オルガノイドからのシングルセル調製
樹立した脳オルガノイドを消化酵素(パパイン)で解離し、RNA 配列解析やフローサイトメトリーなどシングルセルでの解析に適した細胞懸濁液を調製します。

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詳細を見る(STEMCELL Technologies社サイトへリンク)

脳オルガノイドの凍結組織切片作製と免疫染色
樹立した脳オルガノイドの凍結切片を作製し、免疫蛍光染色します。重要なエピトープが保たれるよう、処理中の組織へのダメージを最小限に抑えます。

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詳細を見る(STEMCELL Technologies社サイトへリンク)

背側- 腹側前脳アセンブロイドの樹立
ヒト多能性幹細胞(hPSC)からSTEMdiff™ Dorsal Forebrain Organoid Kit で背側前脳オルガノイドを、STEMdiff™ Ventral Forebrain Organoid Kit で腹側前脳オルガノイドをそれぞれ分化させた後、共培養してアセンブロイドを樹立します。樹立した背側- 腹側前脳アセンブロイドは、前脳の背側- 腹側領域間相互作用モデルとして、介在ニューロンの移動や神経回路の接続性の研究に有用です。

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詳細を見る(STEMCELL Technologies社サイトへリンク)

中脳- 線条体アセンブロイドの樹立
ヒト多能性幹細胞(hPSC)からSTEMdiff™ Dorsal Forebrain Organoid Kit を用いた改変パターニングで線条体オルガノイドを、STEMdiff™ Midbrain Organoid Kitを用いて中脳オルガノイドをそれぞれ分化させた後、共培養してアセンブロイド(AssemBloid™)とよばれる集合体を樹立します。これにより中脳と線条体の領域間相互作用を再現します。

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脳オルガノイドとミクログリアの共培養
ヒト多能性幹細胞(hPSC)から、STEMdiff™ Cerebral Organoid KitまたはSTEMdiff™ Dorsal Forebrain Organoid Differentiation Kit (またはSTEMdiff™ Ventral Forebrain Organoid Differentiation Kit)で大脳または背側(または腹側)前脳オルガノイドを、STEMdiff™ Hematopoietic Kit およびSTEMdiff™ Microglia Differentiation Kit でミクログリアをそれぞれ分化させた後、共培養して神経オルガノイド内にミクログリアが取り込まれたアセンブロイドを樹立します。

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その他の技術情報

脳・神経オルガノイドとアセンブロイドに関わるトピックを解説した動画(ウェビナー)、および研究発表ポスターです。

概要 画像をクリックするとリンクが開きます

脳オルガノイド技術の進歩とヒト生物学への応用
Advances in Brain Organoid Technologies and their Applications to Human Biology
- Dr. Madeline Lancaster (2019)
脳オルガノイドによる筋収縮刺激可能な長距離神経走行の形成などを例に、ヒトの生物学的な複雑さを模倣したin vitro モデルを解説します。
(視聴にはSTEMCELL Technologies 社のサイトにて登録が必要です。)

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再生時間 17:44

結節性硬化症の幹細胞由来3次元モデルとしての大脳オルガノイド
Cerebral Organoids as 3D, Stem Cell-Derived Models of Tuberous Sclerosis Complex
- Dr. Juergen Knoblich (2020)
大脳オルガノイドによる結節性硬化症モデルを用いた研究を解説します。
(視聴にはSTEMCELL Technologies 社のサイトにて登録が必要です。)

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再生時間 43:00

領域特異的な神経オルガノイドによる高次元化した神経回路・機能モデル
Guided Neural Organoid Culture Systems: Adding Dimensions to Model Neural Circuitry and Function
- Leon Chew MSc. (2023)
神経オルガノイドの各種サブタイプを紹介し、樹立した領域特異的な神経オルガノイドをどのように研究に導入できるか解説します。
(視聴にはSTEMCELL Technologies 社のサイトにて登録が必要です。)

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再生時間 38:43

ヒトの発達・疾患研究のための脳オルガノイドおよびアセンブロイドの構築
Building Brain Organoids and AssemBloids™ to Study Human Development and Disease
- Dr. Sergiu Paşca (2020)
ヒト脳の発生と精神疾患病態の長期過程への知見を得るため、脳領域特異的なオルガノイドによるモデルの開発過程を解説します。
(視聴にはSTEMCELL Technologies 社のサイトにて登録が必要です。)

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再生時間 62:03

脳バリア透過性およびCSF 分泌モデルとしての脈絡叢オルガノイド
Modeling Brain Barrier Permeability and CSF Secretion with Choroid Plexus Organoids
- Dr. Laura Pellegrini (2022)
脈絡叢の神経上皮バリアおよび分泌機能モデルとして脈絡叢オルガノイドをどのように樹立し、研究あるいはin vitroでの脳脊髄液(CSF)様サンプルの収集に用いたか解説します。
(視聴にはSTEMCELL Technologies 社のサイトにて登録が必要です。)

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再生時間 52:34

幹細胞由来2D および3D モデル開発の新しい方法
Novel Methods for the Development of Stem Cell-Derived 2D and 3D Models
- Drs. Erin Knock & Jessica Hartman (2023)
ヒト多能性幹細胞(hPSC)由来の研究モデルを紹介し、hPSC から脈絡叢オルガノイドへの分化とその特徴を解説します。
(視聴にはSTEMCELL Technologies 社のサイトにて登録が必要です。)

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再生時間 59:42

背側および腹側前脳オルガノイドと背側- 腹側前脳アセンブロイドの樹立
A Reliable, Efficient, and Feeder-Free Method to Generate Brain-Region-Specific Dorsal and Ventral Forebrain Organoids From Human Pluripotent Stem Cells to Model Early Human Brain Development
- Leon H. Chew, et al. (2019)
ヒト背側前脳と腹側前脳の特徴を備えたオルガノイドを、スケールアップが容易なフィーダーフリー培養系で樹立しました。オルガノイドは電気生理的な活性を示し、さらに共培養することでアセンブロイドを樹立できました。

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神経細胞の共培養

神経変性疾患や神経炎症における細胞間相互作用の研究には、ニューロンとグリア細胞などの共培養モデルが役立ちます。

プロトコル

STEMdiff™分化培地を使用した、ニューロン‐グリア共培養(2次元培養)のプロトコルです。

概要 画像をクリックすると拡大表示できます

前脳ニューロンとアストロサイトの共培養
ヒト多能性幹細胞(hPSC)から前脳型ニューロンとアストロサイトを別々に分化誘導した後、それらを組み合わせて2 次元の共培養系を樹立します。

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詳細を見る(STEMCELL Technologies社サイトへリンク)

前脳ニューロンとミクログリアの共培養
ヒト多能性幹細胞(hPSC)から前脳型ニューロンとミクログリアを別々に分化誘導した後、それらを組み合わせて2 次元の共培養系を樹立します。

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詳細を見る(STEMCELL Technologies社サイトへリンク)

前脳ニューロン、アストロサイトとミクログリアの3 種共培養
ヒト多能性幹細胞(hPSC)から前脳型ニューロン、アストロサイト、ミクログリアを別々に分化誘導した後、それらを組み合わせて2 次元の共培養系を樹立します。

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詳細を見る(STEMCELL Technologies社サイトへリンク)

運動ニューロンとミクログリアの共培養
ヒト多能性幹細胞(hPSC)からSTEMdiff™ Motor Neuron Differentiation Kitで運動ニューロンを、STEMdiff™ Microglia Differentiation Kit でミクログリアをそれぞれ分化させた後、それらを組み合わせて2 次元の共培養系を樹立します。

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運動ニューロンと筋管の共培養
ヒト多能性幹細胞(hPSC)からSTEMdiff™ Motor Neuron Kit で運動ニューロンを、STEMdiff™ Myogenic Progenitor Supplement KitMyoCult™ Differentiation Kit で筋管をそれぞれ分化させた後、それらを組み合わせて2 次元の共培養系を樹立します。

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その他の技術情報

ニューロンの共培養に関わるトピックを解説した動画(ウェビナー)、および研究発表ポスターです。

概要 画像をクリックするとリンクが開きます

ヒト多能性幹細胞(hPSC)由来ミクログリアの分化と特徴
Differentiating and Characterizing hPSC-Derived Microglia
- Dr. Jin-Yuan Wang (2022)
hPSC からミクログリアへの分化に重要なポイントを解説します。また、STEMdiff™ Microglia 培養系で作製したミクログリアの特徴と、共培養による神経炎症モデルへの応用例を紹介します。
(視聴にはSTEMCELL Technologies 社のサイトにて登録が必要です。)

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再生時間 31:46

前脳ニューロン、アストロサイト、ミクログリアの3 種共培養による損傷修復モデル
It Takes Two—Or Three: Comparing Human Pluripotent Stem Cell-Derived Glia-Neuron Co-Cultures to Neuron Monoculture Under Basal and Injury Conditions
- Jin-Yuan Wang, et al. (2020)
ニューロン・グリア相互作用モデルとして、ヒト多能性幹細胞(hPSC)からSTEMdiff™培地で分化させた前脳ニューロン、アストロサイト、ミクログリアを用いた2 次元の共培養系を樹立しました。前脳ニューロンはアストロサイトとの共培養により形態と生存が改善し、アストロサイト・ミクログリアとの3 種共培養で損傷の修復が早まることが示されました。

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中脳ニューロンとミクログリアの共培養
In Vitro Modeling of Parkinson’s Disease Using Human Pluripotent Stem Cell-Derived Midbrain Neuron and Microglia Co-Culture With Alpha-Synuclein Fibrils
- Noëmie LeBlanc, et al. (2023)
パーキンソン病患者におけるミクログリアの貪食や神経炎症の機能をモデル化するため、2 次元共培養系を樹立しました。ヒト多能性幹細胞(hPSC)からSTEMdiff™ Midbrain Neuron Kits で中脳ニューロン、STEMdiff™ Microglia Kits でミクログリアへそれぞれ分化させた後、共培養して解析しています。α -シヌクレインタンパク質の蓄積によるニューロンへの毒性はミクログリアにより緩和されることが示唆されました。

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運動ニューロンとミクログリアまたは筋管の共培養
Rapid, High-Efficiency Differentiation of Motor Neurons from Human Pluripotent Stem Cells
- Jin-Yuan Wang, et al. (2022)
運動ニューロン疾患モデルとして、ヒト多能性幹細胞(hPSC)から分化させた運動ニューロンとミクログリア、および運動ニューロンと筋管の2 次元共培養系を樹立しました。運動ニューロンの共培養プロトコルも紹介しています。

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電気活動の測定

微小電極アレイ(microelectrode array;MEA)は多数の微小電極を配置したプレートに細胞を播種し、細胞が発する電気信号を非侵襲的に測定する機器です。MEA は神経細胞の電気活動を簡単に長期間測定でき、神経ネットワークをハイスループットに解析できます。そのため、MEA による測定は神経機能の電気生理的研究に重要な手法です。

国内研究例

「ベリタスサイエンスレター」で紹介した、国内研究者によるニューロンの電気活動測定(MEA)を用いた研究例です。

概要 画像をクリックするとリンクが開きます

ヒトiPS 細胞由来神経細胞を用いた毒性・安全性評価法と創薬スクリーニングへの応用
- 鈴木 郁郎 先生(東北工業大学 大学院工学研究科 電子工学専攻)
ヒトiPS 細胞由来ニューロンをMEA 上で単独培養またはアストロサイトと共培養し、神経ネットワークの電気活動を解析しました。MEA 測定にはSTEMCELL Technologies 社の神経生理学用の無血清培地BrainPhys™を使用しました。培養開始から6 週目に機能的なシナプス形成とイオンチャンネルに対する薬剤応答が検出され、ヒトiPS 細胞由来ニューロンが毒性・安全性試験や創薬スクリーニングへの適性を示しました。

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大脳皮質オルガノイドにおける痙攣陽性化合物および抗てんかん薬の応答
- 鈴木 郁郎 先生(東北工業大学 大学院工学研究科 電子工学専攻)
STEMCELL Technologies 社のSTEMdiff™ Cerebral Organoid Kit でヒトiPS 細胞から作製した大脳皮質オルガノイドをMEA 上に配置し、電気活動を測定しました。測定用の培地にBrainPhys™を使用しました。大脳皮質オルガノイドの電気活動は痙攣陽性化合物および抗てんかん薬の投与に対して用量依存的で、かつ通常の2 次元で培養したニューロンと比べて生体脳に近い応答が検出されました。

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ラット初代培養皮質神経細胞の神経活動及び薬物応答性に与える培地条件の検討
- 小島 敦子 様(エーザイ株式会社 高度バイオシグナル安全性評価部)
ラット初代皮質ニューロンをMEA 上で培養して電気活動を測定し、培養開始から19 日目に痙攣誘発陽性薬の添加実験を行いました。測定用の培地にBrainPhys™を使用すると、従来の培地に比べて用量依存的な応答が明瞭に検出されました。

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その他の技術情報

ニューロンの電気活動測定(MEA)に関する研究発表ポスターです。

概要 画像をクリックするとリンクが開きます

初代ニューロンを用いた薬理化合物の神経毒性スクリーニング
An In Vitro Assay to Determine the Neurotoxic Effects of Pharmacological Compounds
- Carmen K.H. Mak, et al. (2022)
ラット初代皮質ニューロンをMEA 上で培養し電気活動を測定しました。培養開始から2 週間後に痙攣誘発性または抑制性の化合物を投与すると、神経スパイクと同期バーストに特徴的な応答が検出されました。

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ニューロンの長期培養による神経ネットワークの発達
BrainPhys™ Neuronal Medium Supports the Electrical Activities of Neurons Derived from Human Pluripotent Stem Cells and Primary CNS Tissues in Long-Term Cultures
- Carmen K.H. Mak, et al. (2016)
ヒト多能性幹細胞(hPSC)由来ニューロンまたはラット初代皮質ニューロンをMEA 上で長期培養し、電気活動を測定しました。BrainPhys™培地で測定したところ従来の培地に比べて神経活動が改善され、同期した神経ネットワーク活性の発達が示されました。

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感覚ニューロンの分化と神経機能の発達
Efficient Differentiation of Human Pluripotent Stem Cells to Sensory Neurons
- Alym Moosa, et al.
ヒト多能性幹細胞(hPSC)からSTEMdiff™ Neural Crest Differentiation Kit で分化した神経堤細胞をMEA 上に播種し、STEMdiff™ Sensory Neuron Kitsで感覚ニューロンに分化させました。感覚ニューロンの長期培養による成熟に伴い、自発的神経活動が発達し、侵害刺激への応答が検出されました。

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