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特集・クローズアップ

2024/05/28

神経研究に有用な培養ツールまとめ(STEMCELL Technologies社)

  • 用途別細胞培養

神経細胞の培養に役立つ STEMCELL Technologies社 の培地製品を、研究のワークフローに沿ってご紹介します。加えて、神経科学の研究領域、培養アプリケーション、組織・細胞ごとにおすすめの情報をまとめています。

なお、掲載した情報は一部です。さらに詳しく知りたい方は冊子「神経研究のための培養ガイドブック」もご参照ください:
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神経研究用培地 選択ガイド

STEMCELL Technologies社の神経研究用培地の選択ガイドです。
多能性幹細胞またはプライマリー細胞由来の神経細胞培養(2D または 3D培養)ワークフローに沿って、各ステップに最適な培地を示しています。

※ 画像のクリックで拡大表示

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キーワード

ES/iPS細胞、ヒト、マウス、ラット、脳腫瘍幹細胞、グリオブラストーマ、ニューロスフェア、神経オルガノイド、大脳オルガノイド、背側前脳オルガノイド、腹側前脳オルガノイド、中脳オルガノイド、脈絡叢オルガノイド、神経前駆細胞、神経幹細胞、神経細胞、神経堤細胞、皮質ニューロン、ドーパミン作動性ニューロン、アストロサイト、運動ニューロン、感覚ニューロン、ミクログリア、誘導、増殖、分化、成熟、維持培養

研究領域から探す

神経の代表的な研究領域

アルツハイマー病研究

アルツハイマー病(Alzheimer’s Disease)は代表的な神経変性疾患のひとつです。アルツハイマー病患者の脳に見られる主な病理組織学的な所見は、アミロイド斑(アミロイドβの蓄積)、神経原線維濃縮体(タウタンパク質の過剰リン酸化)、神経炎症(中枢神経系の炎症反応)、血管機能不全に分類できます。アルツハイマー病の神経炎症には、脳のグリア細胞であるアストロサイトとミクログリアが重要な役割を果たすと考えられており、これらの細胞におけるアルツハイマー病関連遺伝子の発現によっても裏付けられています(Essayan-Perez S, et al (2019). Neurobiol Dis. 130:104503.)。

パーキンソン病研究

パーキンソン病(Parkinson’s Disease)はアルツハイマー病と同様に代表的な神経変性疾患です。パーキンソン病患者は特徴的な運動症状と同時に、頻繁に認知および精神症状を示します。細胞レベルでは、神経伝達物質放出に関わるα -シヌクレインタンパク質の凝集と、その蓄積によるレビー小体(細胞内封入体)の形成が見られます。これらの病態は中脳の黒質にあるドーパミン作動性(dopaminergic)ニューロンを変性させ、ドーパミン放出が大きく損なわれることで症状が現れます。一方、脳のグリア細胞であるミクログリアとアストロサイトが神経炎症(中枢神経系の炎症反応)を介して神経変性に影響する非細胞自律効果も知られています(Galet B, et al. (2020). Front Neurol. 11:1005.)。

その他 神経炎症研究(ALS、自閉症)

筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic lateral sclerosis;ALS)は、運動ニューロン(motor neuron)の消失によって随意筋の麻痺が進行する神経変性疾患で、多くの患者は呼吸不全で死亡します。運動ニューロンの変性に伴い、中枢神経系で貪食を担うミクログリアが活性化し、アストロサイトが増殖することも報告されています(Liu E, et al (2021). Front Mol Neurosci. 14:767041)。

自閉症あるいは自閉スペクトラム症(autism spectrum disorder)は、コミュニケーションや社会行動の欠陥を特徴とする神経発達障害です。自閉症の病因は解明されていませんが、ミクログリアとアストロサイトが神経炎症などを介して重要な役割を果たす可能性が示唆されています(Xiong Y, et al. (2023) Front Neurosci. 17:1125428.)。

神経疾患と神経炎症の研究に役立つ情報

アルツハイマー病、パーキンソン病、ALS、自閉症を含む神経疾患と神経炎症の研究に役立つ情報をご紹介しています。共培養のプロトコル、学会発表ポスター、研究者によるウェビナーなどをご覧ください。

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培養アプリケーションから探す

神経の代表的な培養アプリケーション

脳・神経オルガノイド、アセンブロイドの樹立

オルガノイドとは目的とする臓器の主要な特徴の一部をもつ3次元(3D)の組織です。ヒトの脳・神経オルガノイドは、実用的および倫理的な観点から、初代細胞や摘出した組織ではなく多能性幹細胞(hPSC)を分化させて樹立します。樹立したヒトの脳・神経オルガノイドは、脳の発生中の細胞組成と3D 構造を再現できるため、ヒト中枢神経系に特有の発生過程や神経疾患の研究モデルとして重要です。

アセンブロイド(AssemBloid™)はオルガノイドの共培養系です。複数のオルガノイドの融合またはオルガノイドへの他の細胞の取り込みによって樹立され、神経系をより高次元にモデル化します。たとえば、異なる脳領域特異的オルガノイドを融合させたアセンブロイドは脳領域間相互作用モデルとして、脳オルガノイドにミクログリアを取り込ませたアセンブロイドは神経炎症モデルとして有用です。

神経細胞の共培養

神経変性疾患や神経炎症における細胞間相互作用の研究には、ニューロンとグリア細胞などの共培養モデルが役立ちます。

電気活動の測定

微小電極アレイ(microelectrode array;MEA)は多数の微小電極を配置したプレートに細胞を播種し、細胞が発する電気信号を非侵襲的に測定する機器です。MEA は神経細胞の電気活動を簡単に長期間測定でき、神経ネットワークをハイスループットに解析できます。そのため、MEA による測定は神経機能の電気生理的研究に重要な手法です。

神経研究に役立つ細胞培養アプリケーション

神経オルガノイド・アセンブロイドの樹立、神経共培養、電気活動測定を含む培養アプリケーションに役立つ情報をご紹介しています。プロトコル、学会発表ポスター、研究者によるウェビナーなどをご覧ください。

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組織・細胞別 注目の培地

神経の代表的な組織・細胞と、その培養に適した培地

領域特異的な脳オルガノイド

STEMdiff™培地でヒト多能性幹細胞から領域特異的な脳オルガノイドを作製

ヒト多能性幹細胞(hPSC)から特定の脳領域へガイド分化し、脳領域特異的なオルガノイドを作製する方法が報告されています。
Sergiu P Paşca 博士らのプロトコル* に基づいてSTEMCELL Technologies 社が開発した無血清のSTEMdiff™培地を用いて、前脳または中脳の組織にパターニングしたオルガノイドを作製できます。
* 前脳 - Paşca S, et al.(2017)Nature 545(7652): 54-59、中脳 - Yoon SJ, et al. (2018) Nature Methods 16: 75–8.

運動ニューロン

STEMdiff™培地でヒト多能性幹細胞から運動ニューロンを作製

ヒト多能性幹細胞(hPSC)から分化誘導した運動ニューロンは、神経変性や神経筋疾患のin vitro モデルに有用です。
Yves Maury 博士らのプロトコル* に基づいてSTEMCELL Technologies 社が開発した無血清のSTEMdiff™培地を用いて、hPSC から機能性の運動ニューロンへ効率良く分化誘導できます。得られる運動ニューロンは中枢神経系の脊髄運動ニューロン(下位運動ニューロン)に該当し、コリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT)などの特徴的なマーカーを発現します。脊髄運動ニューロンはin vivo では脳からシナプス入力を受ける一方で、神経筋接合部を介したシグナル伝達により筋収縮を制御します。
* Maury Y, et al. (2015) Nat Biotechnol. 33(1):89-96.

神経前駆細胞

STEMdiff™培地でヒト多能性幹細胞から神経前駆細胞を作製

ヒト多能性幹細胞(hPSC)から神経誘導して得られる神経前駆細胞(neural progenitor cell;NPC)は、多様な神経細胞のタイプに分化する起点として、in vitro での中枢神経系の研究に広く役立ちます。
STEMCELL Technologies 社の無血清培地、STEMdiff™ SMADi Neural Induction Kit を用いて、hPSC から高純度な神経前駆細胞を作製できます。本品には、Stuart M Chambers 博士らのプロトコル* に基づくTGF- β /BMP 依存性のSMAD シグナル阻害剤(培地サプリメント)が含まれており、必要に応じて培地に添加することで、分化が困難な細胞株も効率的に神経誘導できます。さらに、神経前駆細胞は同じSTEMdiff™シリーズの無血清培地類で増殖させたり、ニューロンやアストロサイトへ分化させることができます。
* Chambers SM, et al. (2009) Nat Biotechnol. 27(3):275-80.

ミクログリア

STEMdiff™培地でヒト多能性幹細胞からミクログリアを作製

ヒト多能性幹細胞(hPSC)から分化誘導したミクログリアは、神経変性や神経炎症のin vitro モデルの構築に役立ちます。
Edsel M. Abud 博士らのプロトコル* に基づいてSTEMCELL Technologies 社が開発した無血清のSTEMdiff™培地を用いて、hPSC 由来の造血前駆細胞(hematopoietic progenitor cell)から機能性をもつミクログリアへ効率良く分化誘導できます。
* Abud EM, et al. (2017) Neuron. 94(2):278-293.e9.

BrainPhys™

神経の分化と成熟に適した培地

STEMCELL Technologies 社のBrainPhys™は、神経培養用の無血清な基礎培地です。従来の神経培養の課題を克服すべく開発された培地の組成(Bardy C, et al. (2015) Proc Natl Acad Sci USA. 112(20):E2725-34.)に基づいており、in vitro におけるニューロンの生存だけでなくシナプス活性を含む神経機能をより良くサポートします。

神経研究向け注目の培地 ー 組織・細胞別

ヒト多能性幹細胞(hPSC)から、領域特異的な脳オルガノイド、運動ニューロン、神経前駆細胞、ミクログリアにそれぞれ分化させるSTEMdiff™培地、および神経の分化や成熟に適したBrainPhys™培地の情報をご覧ください。

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