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ラーニングコーナー

2019/08/01

hPSCの核型異常を考える(2019年ISSCRでの一つの問題提起)

  • 用途別細胞培養

再生医療に向けてヒト多能性幹細胞 (hPSC) の分化誘導体を使用した臨床応用が進む中で、hPSCの品質やGenome Integrityに新たな焦点が当てられております。近年懸念されているのがhPSCのゲノム安定性(genomic stability)についてです。hPSCのゲノムではnon-randomかつ散発的に核型異常が発生しますが、これらの背景にあるメカニズムについては未だに解明されてはおりません。

本稿では、hPSCの核型異常に関する最新の知見と、核型異常の解析手法についてご紹介します。

hPSCにおける核型異常の頻度

hPSCではどのくらい核型異常がおきているのか?

2019年6月から7月に開かれた ISSCRにおいて、WiCell Research Instituteから、Cell Bankに保存されている細胞株に関する知見が紹介されました。検討した839細胞株のうち285株が品質基準を満たさず、285株のうち61 %に核型異常起きていたとの報告がありました(図:左)。2011年のISCIの報告では、長期培養中のhPSC 136 株の20.0%で核型異常が確認されております。(図:右)

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図:左)D. Felkner. et al. 2019. ISSCR. Human pluripotent stem cell quality: A scientific wake‐up call.

図:右)International Stem Cell Initiative et al. 2011より

hPSCによく見られる核型異常

hPSCにおいて報告されている核型異常とは?

hPSCにおいて最も影響を受けやすい染色体は、1、8、10、12、17、18、20、Xとの報告があります。下図では、既知の核型異常の原因となる変異について紹介しております(Baker D et al. 2016)。hPSCにおいて染色体1、12、17、20の重複、もしくは、染色体10、18、22における配列の欠損は核型異常を持つ細胞が増殖することにおいて有利となります(Olariu, V. et al. 2010)。

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Baker, D. et al. 2016

核型異常が獲得される原因については、以下をご覧ください。
あなたのES/iPS細胞は正常?異常?!(勉強コーナー:ヒトES/iPS細胞における遺伝的変化の原因)

シングルセル継代と核型異常の関連については、以下をご覧ください。
ES/iPS細胞培養におけるシングルセル継代の課題

核型異常の解析手法

hPSCの核型異常検出にはどのようなアッセイが有効なのか?

G-バンド、fluorescence in situ hybridization (FISH) 、マイクロアレイ、NGS、qPCRなどの各解析手法について下表にまとめました。
解析手法によって一長一短があります。

ヒトiPS細胞(WLS-4D)の染色体20qにおける重複のように、hPSC Genetic Analysis Kitin situハイブリダイゼーションによって検出される一方、G-バンドでは検出できない変異もあります。

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*% based on standard methods (number of cells counted)

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新しい解析手法:hPSC Genetic Analysis Kitとは

核型異常解析への要望や課題

従来の解析手法に対し、研究者はこれまで以下のような課題を感じていました。

  • 維持培養で   : 本当は数継代毎に解析したいのに…
  • 論文用の実験で : 論文を出す前に早めに確認しておきたい…
  • ゲノム編集前後に  : ゲノム編集に由来しない変異が入ったら大変…
  • その他チェックで  : G-Band や NGS に複数サンプルを外注するのはコストが高い…

hPSC Genetic Analysis Kitの特長

hPSC Genetic Analysis Kitは、上記の課題を解決できる新しいキットで以下の特長を備えています。

  • TARGETED  : ヒトES/iPS細胞で報告されている核型異常の約75%をカバー
  • Time-EFFECTIVE  : 短時間で頻繁にスクリーニング可能(20 sample / kit)
  • RAPID  : 細胞回収から結果まで 3 時間
  • CONVENIENT  : 便利な On-lineツールで遺伝子解析

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hPSC Genetic Analysis Kit (ST-07550)

参考文献

・Andrews PW et al. (2017) Assessing the safety of human pluripotent stem cells and their derivatives for clinical applications. Stem Cell Reports 9(1): 1-4.

・International Stem Cell Initiative et al. (2011) Screening ethnically diverse human embryonic stem cells identifies a chromosome 20 minimal amplicon conferring growth advantage. Nat Biotechnol 29(12): 1132-44.

Baker D et al. (2016) Detecting genetic mosaicism in cultures of human pluripotent stem cells. Stem Cell Reports 7(5): 998-1012

Olariu, V. et al. (2010). Modeling the evolution of culture-adapted human embryonic stem cells. Stem Cell Res. 4, 50–56.

Avery, S et al. (2013). BCL-XL mediates the strong selective advantage of a 20q11.21 amplification commonly found in human embryonic stem cell cultures. Stem Cell Rep. 1, 379–386.

・Barbaric I et al. (2014) Time-lapse analysis of human embryonic stem cells reveals multiple bottlenecks restricting colony formation and their relief upon culture adaptation. Stem Cell Reports 3(1): 142-55.

・Merkle F et al. (2017) Human pluripotent stem cells recurrently acquire and expand dominant negative P53 mutations. Nature 545(7653): 229-33.

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