ラーニングコーナー
2018/06/25
ヒト大脳オルガノイドの培養で確認すべきポイント「STEMdiff Cerebral Organoid」
- 用途別細胞培養
ヒト多能性幹細胞(ヒトES/iPS細胞、hPSCs)由来 2次元(2D)神経培養系は神経研究に有用なモデルです。しかし、後生動物(metazoan、多細胞動物)の大脳の複雑な組織化構造を再現するには限界があります。
STEMdiff Cerebral Organoid Kitの概要
大脳オルガノイドの3次元(3D)in vitro 培養システムではヒト脳組織の発生を再現可能で、ユニークな神経学的発達および疾患プロセスの研究に、ヒト脳の生理学的同様のin vitroモデルをもたらします。
大脳オルガノイドは、ジカウイルス感染によって引き起こされる疾患(小頭症)、統合失調症(ASD)などのヒト脳発達および脳・神経学的障害の研究に重要なツールとなります。
Dr. Madeline Lancaster(Lancasterのプロトコールで培養した大脳オルガノイドは7層構造を示します)が発表した成分に基づいて開発された「STEMdiff Cerebral Organoid Kit」は、大脳オルガノイド形成効率を高め、最適化された培養システムおよび簡便なプロトコールを提供します。STEMdigg Cerebral Organoid Kitとは、ヒト多能性幹細胞(ヒトES/iPS細胞、hPSC)から脳オルガノイドの形成効率と再現性が高い、無血清・all-in-oneキットです。
ここでは、STEMdiff Cerebral Organoid Kitを用いた胚様体(EB)形成からオルガノイド成熟までの過程にわたる、大脳オルガノイド培養の各段階における確認すべきポイントについてご紹介します。
大脳オルガノイドの培養プロトコール 概要
STEMdiff Cerebral Organoid Kitのプロトコール 詳細
EB 形成段階(0~5日)のプロトコール
EB形成段階(0~5日)の形態
EB 形成(0~5日)での注意点
- Day 5(EB形態確認): EB形態の確認→丸く滑らかなエッジ
- 直径:300 μm以上 (典型的な直径は400 - 600 μm)
神経誘導段階(5~7日)のプロトコール
神経誘導段階(5~7日)の形態
神経誘導段階(5~7日)での注意点
- Day 7(EBの形態確認):神経化したEBの形態確認→光学的に半透明で滑らかなエッジ。マーカー発現:PAX6、ZO-1。
増殖段階(7~10日)のプロトコール
増殖段階(7~10日)でMatrigelに埋める方法
増殖段階(7~10日)での注意点
- MatrigelにEBを埋める方法:滅菌したParafilm上でEBをMatrigelに埋め、~30分、37℃でインキュベートする(Matrigelを30分以上インキュベートしないこと)
- MatrigelにEBを埋めるときは、慎重にEBの培地(5μL培地/50μL Matrigel程度)を除去しておく(除去しないとEBが大きくなる可能性がある)
増殖段階(7~10日)の形態
Day 10(EBの形態確認):EB表面に出芽が観察され、神経上皮細胞の増殖を示す
成熟段階(10~40日+)のプロトコール
成熟段階(10~40+日)での注意点
- 振とう培養すること(振とう培養しないとオルガノイド大きくなりすぎる可能性がある。オルガノイドが大きくなりすぎると、中心にある細胞が死滅する原因になる。)
成熟段階(10~40日+)の形態
Day 40(オルガノイドの形態確認):オルガノイドの形態→光学的に半透明なエッジ、稠密な組織を示す
大脳オルガノイドの大きさ
動画マニュアル
STEMCELL Technologies社提供の動画マニュアルです。
- 2:43 - 適切なEBの形成
- 5:04 - 埋め込みシート(滅菌したParafilm)上のMatrigelにEBを埋め込む方法 *
- 5:58 - 埋め込みシート上でオルガノイドを洗浄する方法 *
- 6:56 - 注意深く培地交換 *
- 7:19 - オービタルシェイカーで振とう培養
- 7:45 - 成長したオルガノイドの形態
- 8:37 - 形態が良くないオルガノイドの例
* 大脳オルガノイド培養における特に重要なポイントです。