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研究者の声

2026/06/24

如何にして外部環境は生殖細胞エピゲノムへ記録されるのか?ーDynabeads™とConcanavalin Aを用いた核補捉型CUT&Tagー 研究者の声【50】

  • タンパク・遺伝子発現解析

少量サンプルでもタンパク質 - DNA結合部位を高感度・低バックグラウンドで網羅的に解析できる研究手法としてCUT&Tag(Cleavage Under Targets and Tagmentation)法が知られています。今回は東京理科大学の幾代 藍 様が行っているDynabeadsとConcanavalin Aを用いた"核捕捉型"CUT&Tagについてご紹介いたします。

研究者紹介

Lab pic-2.png

幾代 藍 様、前澤 創 先生

東京理科大学 創域理工学研究科 生命生物科学専攻 博士後期過程2年

東京理科大学 創域理工学部 教授

ご所属:東京理科大学 創域理工学研究科 前澤研究室

研究室のホームページ

※ 所属や役職等は掲載当時のものです

研究内容

前澤研究室では、哺乳類の精巣で作られる生殖細胞のエピゲノム制御機構と、その生理的意義について研究しています。
男性の栄養環境や飲酒、喫煙、熱ストレスなどの環境要因は、精子機能の低下や男性不妊の原因となります。さらに近年は、精子中のエピゲノム(DNAメチル化、ヒストン修飾、small RNA)に生じた異常が、受精を介して次世代に伝わり、子孫の発生過程や健康状態を損なうことが注目されています。
そこで私たちは、エピゲノムが精巣内で進行する精子形成過程においてどのように形成・維持されるのか、また環境要因の情報がどのような機構によって記録されるのかを理解することが重要だと考えています。
精子形成過程では、減数分裂やヒストン-プロタミン置換を伴いながら、クロマチン構造が劇的に再編成されます。この過程では、DNAメチル化やヒストン翻訳後修飾が動的に書き換えられ、使用される遺伝子と抑制される遺伝子が厳密に制御されています。
一方で、生体精巣から分取した生殖細胞は熱や物理刺激に対して非常に脆弱であり、少量サンプルから安定して解析可能な高感度エピゲノム解析法が求められています。 その一例として、以下で紹介するように、Dynabeads™およびConcanavalin Aを利用した核捕捉型CUT&Tag法を用い、ヒストン修飾プロファイリングを行っています。

実験方法及び材料

【0】材料等
細胞 : 酵素処理によりマウス精巣から調製した単一細胞
抗体 : anti-H3K4me3 (#9751; Cell Signaling Technology) や anti-H3K27me3 antibody(#C15410195; Diagenode)など


【1】StreptavidinビーズへのBiotin-ConA結合
1. Dynabeads™ MyOne™ Streptavidin T1を、0.01% Tween-20, 1 mM CaCl₂, 1 mM MnCl₂を含むPBSで洗浄
2. Biotinylated Concanavalin Aを添加し、室温で反応
3. Ca²⁺/Mn²⁺含有PBSで洗浄後、使用直前まで保持


【2】細胞核抽出および固定
4. PBSで洗浄した細胞を、NE buffer (20% Glycerol, 0.1% TritonX-100, 0.5 mM Spermidineを含む)で透過処理
  ※DigitoninではなくTritonX-100を用いることにより細胞核抽出
5. 0.1% PFAで軽度に固定を行う
  ※クロマチン構造の維持とアクセス確保。使用する生殖細胞が調製過程に対して感受性が高いため、0.1%PFAを用いたクロスリンクを導入


【3】ConA beadsへの核結合および抗体反応
6. 細胞核をWash buffer (150 mM NaCl, 0.5 mM Spermidineを含む) 中でConA beadsと反応
7. 磁気スタンドを用いて0.05% Digitonin, 0.1% BSA, 2 mM EDTAを含むWash bufferに懸濁し、一次抗体と反応
8. 磁気スタンドを用いて0.05% Digitoninを含むWash bufferに懸濁し、二次抗体と反応


【4】タグメンテーション反応
9. 磁気スタンドを用いて洗浄後、300 mM NaCl中でpA/G-Tn5 transposomeを核内ロード
10. 磁気スタンドを用いて洗浄後、10 mM MgCl2中でタグメンテーション反応

実験結果

外部環境によるエピゲノムの変化は、トランスジェニック実験群での変化と比べて変動するゲノム領域の予想がつかず、また変化量も顕著ではないため、(少なからず混入する)batch effect由来の変化と生物学的変化の分離が重要な課題となります。私たちは、biological replicateの再現性を十分に確保した上で、統計的に差次的エンリッチメント解析を行い、少なくとも数百~数千の変動領域を同定することができました。

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図1.精巣生殖細胞における核捕捉型CUT&Tagの結果


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図2.ヒストンメチル化変動ピーク領域

図1で検出した微細なヒストン修飾の変化を、図2において統計的に同定しました。
図1では、コントロール群 (Ctrl.) と処理群 (Treat) のマウス精巣生殖細胞におけるH3K4me3およびH3K27me3の核補足型CUT&Tagのプロファイルを示しています(IGV track view)。一部のピーク領域(gray box)では、実験群間で生じるヒストン修飾シグナルの微細な変化を検出することができました。また、H3K4me3においては、ピーク領域以外でのシグナルがほとんど認められず、非常にバックグラウンドの低いデータを得ることができました。
図2では、これらのピーク領域を基に各ヒストンメチル化の変動領域を同定し、ボルケーノプロットを作成しました。その結果、Ctrl.に比べTreatにおいてH3K4me3が増加したピーク領域が489個、減少したピーク領域が1,001個検出されました。一方、H3K27me3では、増加した領域が177個、減少した領域が168個検出されました。これにより、図1で観察された微細な変化が統計的に裏付けられたことが示されました。

参考文献
Bench top CUT&Tag V.3 (URL: https://www.protocols.io/view/bench-top-cut-amp-tag-bcuhiwt6.pdf?utm_source=consensus)

結論

分散性が優れるDynabeads™ MyOne™ Streptavidin T1とBiotinylated Concanavalin Aを組み合わせた核捕捉型CUT&Tag法により、脆弱な精巣生殖細胞における低バックグラウンドかつ高感度なヒストン修飾プロファイリングが可能となりました。
さらに現在本研究室では、自動分注機器を用いて、細胞インプットからCUT&Tagシーケンスライブラリ取得までを一貫して行う全自動ワークフローの構築を進めています。このような複数回の磁気分離・洗浄工程を伴う操作系は、遠心回収ベースの手法では実現が難しく、Dynabeads™ MyOne™ Streptavidin T1を用いた核捕捉系ならではの高い操作安定性および自動化適性を実感しています。

ご利用いただいた製品

商品コード 商品名 梱包単位
DB65601 Dynabeads MyOne Streptavidin T1 1 mL x 4

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