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ラーニングコーナー

2020/12/14

ヒト多能性幹細胞(hPSC)由来の前脳ニューロン・アストロサイトの共培養法

  • 用途別細胞培養

アストロサイトは脳の全細胞集団の中でも大きな比率を占めており、組織内のイオンの恒常性や、神経機能、シナプス伝達、血液脳関門の完全性、損傷応答において特化した重要な役割を果たしています。In vitroの分化プロトコールに従って培養した場合と同様、in vivoの発生においてもアストロサイトはニューロンより後期に発生し、特に神経回路の発達に寄与します1。神経回路発達に関連する神経細胞間相互作用についてin vitroでモデル化するためには、アストロサイトとニューロンの共培養がしばしば有益となります。

本プロトコールでは、ヒト多能性幹細胞(hPSC)から前脳型ニューロンとアストロサイトをそれぞれ別々に誘導し、それらを組み合わせて共培養することにより、複雑な細胞間相互作用を2次元培養で部分的に再現する方法をご紹介します。

併せてこちらも(https://www.stemcell.com/technical-resources/methods-library/cell-culture/ectodermal-cells/neural-cell-culture/how-to-co-culture-hpsc-derived-forebrain-neurons-and-astrocytes.html#more)ご確認ください。

astrocytes-protocol.jpg

材料

* STEMdiff™ Forebrain Neuron関連製品の製品情報資料に記載されているように、前脳型ニューロンの分化に必要な試薬です。

✝ STEMdiff™ Astrocyte関連製品の製品情報資料に記載されているように、アストロサイトの分化に必要な試薬です。

プロトコール

前脳ニューロンとアストロサイトの共培養スケジュール

forebrain-astrocytes-figure-1.jpg

Figure 1. hPSC由来の前脳ニューロンとアストロサイトの共培養タイムコースの概要
hPSCをそれぞれ別個に前脳型ニューロンとアストロサイトに分化させてから、共培養に最適化された条件のもとで一緒に培養します。

重要事項: 共培養(Figure 1のDay 0)に先立って、分化したアストロサイトはSTEMdiff™ Astrocyte Maturation Medium中で3週間、分化した前脳ニューロンはSTEMdiff™ Forebrain Neuron Maturation Medium中で1週間、それぞれ予め培養しておく必要があります。Figure 1のタイムラインはこれらの成熟期間を設けた場合の一般的なガイドラインになります。必要に応じて、片方または両方の細胞の成熟期間を延長する事も可能です。Figure 1に示すように、タイムラインの長さは各細胞種の分化プロトコール(胚様体(EB)プロトコールまたは単層培養プロトコール)によって異なります。実験を開始する際には関連する製品のデータシート(PIS)を参照し、プロトコールのタイムラインを確認してください。1-2週間以上共培養の後、解析をおこなう事が可能です。

パート I:hPSCからアストロサイトへの分化

  1. STEMdiff™ Astrocyte Kit ( STEMdiff™ Astrocyte Differentiation KitSTEMdiff™ Astrocyte Maturation Kit)のPISに記載されたプロトコールに従って操作をおこないます。
  2. 3週間以上STEMdiff™ Astrocyte Maturation Medium中で培養し、アストロサイトの成熟期を継続します。
  3. 培養した細胞の一部を免疫細胞化学染色し、アストロサイトの分化が問題なく進んでいる事を確認します。

    ご注意:上記のように2つのSTEMdiff™ Astrocyte Kitを用いたアストロサイトの分化・成熟システムでは通常、細胞集団の比率は次のようになります:
    S100ꞵ陽性細胞> 70%、GFAP陽性細胞>60%、ꞵIII-tubulin または doublecortin (DCX)陽性細胞<15%

パート II:hPSCから前脳ニューロンへの分化

  1. STEMdiff™ Forebrain Neuron Kit ( STEMdiff™ Forebrain Neuron Differentiation KitSTEMdiff™ Forebrain Neuron Maturation Kit )のPISに記載されたプロトコールに従って操作をおこないます。

    ご注意: ニューロン前駆細胞をSTEMdiff™ Forebrain Neuron Maturation Mediumに播く際(PISのSection CのStep 1)、その後の実験アプリケーションや予定している培養期間の長さによって細胞密度を1.5 x 104 - 6 x 104 cells/cm2の範囲で検討します。最適な細胞密度はユーザーにより決定して頂く必要があります。

  2. 1週間以上STEMdiff™ Forebrain Neuron Maturation Medium中で培養し、前脳ニューロンの成熟期を継続します。
  3. 培養した細胞の一部を免疫細胞化学染色し、前脳ニューロンの分化が問題なく進んでいる事を確認します。

    ご注意: 上記のように2つのSTEMdiff™ Forebrain Neuron Kitを用いた前脳ニューロンの分化・成熟システムでは通常、細胞集団の比率は次のようになります:
    ꞵIII-tubulin 陽性/ FOXG1陽性細胞>90%、GFAP陽性細胞<10%

パート III:ニューロン-アストロサイト共培養系

  1. STEMdiff™ Astrocyte Kit ( STEMdiff™Astrocyte Differentiation Kit とSTEMdiff™Astrocyte Maturation Kit )のPISのSection C (Astrocyte Maturation)のStep 1-5に従い、本プロトコールのパート Iより得た成熟アストロサイトの解離をおこないます。

    ご注意: 細胞を適量のSTEMdiff™ Astrocyte Maturation Medium(完全培地)で懸濁し、トリパンブルーと血球計算盤を使って細胞カウントをおこないます。

  2. 細胞をSTEMdiff™ Astrocyte Maturation Medium(完全培地)で希釈し、目的の細胞濃度とボリュームに調整します。

    ご注意: アストロサイトの細胞濃度とボリュームは、共培養する細胞比率(アストロサイト:ニューロン)、培養するウェル数、本プロトコールのパート IIで播種した前脳ニューロン前駆細胞の初期細胞密度により決まるため、これらを踏まえてユーザーにより最適化して頂く必要があります。推奨される細胞比率(アストロサイト:ニューロン)は2:1から6:1の範囲です。

  3. 本プロトコールのパート IIで得られた前脳ニューロンのウェルから培地を除去して廃棄します。
  4. ステップ2で調整したアストロサイト懸濁液を前脳ニューロンのウェルに添加します。
  5. 1日後、新しいSTEMdiff™ Forebrain Neuron Maturation Mediumで培地交換します。
  6. 共培養ウェルを37℃、5% CO2の下でインキュベートします。STEMdiff™ Forebrain Neuron Maturation Mediumでの全量培地交換を2-3日毎におこないます。1-2週間の共培養の後、解析をおこなう事ができます。

参考文献

  1. Sloan SA & Barres BA. (2014) Mechanisms of astrocyte development and their contributions to neurodevelopmental disorders. Curr Opin Neurobiol 27: 75–81.

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