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2020/04/26

白血病と遺伝子異常:診断や治療に有用なキメラ遺伝子スクリーニング検査

  • がん関連遺伝子検出

白血病にはさまざまな遺伝子変異が関わっています。白血病の病態分類や診断には、早期の遺伝子検査、とくに疾患や患者の年齢によって特徴のあるキメラ遺伝子の検出が重要となります。
キメラ遺伝子検査による遺伝子スクリーニングには下記の利点があります。

〇キメラ遺伝子の種類を把握:早期に病態判別ができる
〇予後不良性、再発予測の指標となる
〇検出遺伝子をモニタリングターゲットにできる
〇MRDの検出
〇治療計画への適用

本ページでは、白血病における遺伝子スクリーニング検査についての情報、および弊社取り扱い製品で可能なキメラ遺伝子検出について紹介いたします。

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白血病とは

白血病は造血細胞におこる悪性腫瘍の一種で、「血液のがん」ともいわれています。

年間で人口10万人あたり10.9人が罹患しており(2016年)、その値は年々増加しています。また子供から高齢者まで、幅広い年齢層で発生します。高齢者の方が罹患率が高いものの、小児の場合はがんの4割を占める深刻な病気です。
病型は腫瘍細胞の種類や増殖パターンにより分類されます。下表は代表的な病型です。

腫瘍細胞の種類/増殖パターン 未分化な幼若細胞が増殖 幼若細胞、成熟細胞の増殖
骨髄系幹細胞

急性骨髄性白血病(AML)

急性前骨髄球性白血病(APL)

慢性骨髄性白血病(CML)
リンパ系幹細胞 急性リンパ性白血病(ALL) 慢性リンパ性白血病(CLL)
正常血液細胞数の異常・機能異常
造血幹細胞 骨髄異形成(MDS)/骨髄増殖性腫瘍(MPN)

さらに造血細胞のどの分化段階で発生しているか、細胞の形態や割合、どのような遺伝子異常が起こっているかなどにより、詳細な分類が行われています。
現在はWHO分類が主流ですが、WHO分類が適用できない病型やAMLの分類においてはFAB分類も利用されています。

白血病で行われる検査

白血病が疑われる場合、下記の検査をいくつか組み合わせて得られた結果から、上記の分類や診療ガイドラインに照らし合わせて診断が行われます。遺伝子検査は各病院のほか、衛生検査所や一般の検査センターでも行われています。

検査の種類 検査項目 おもな検査手法
血液検査 白血病細胞の有無、赤血球数・白血球数・血小板数の異常 顕微鏡
骨髄検査 骨髄穿刺による骨髄細胞採取、生検による細胞密度確認 顕微鏡、染色体検査や抗体検査
染色体検査 染色体の構造異常(転座、欠失、逆位など)、数異常 Gバンド法、FISH法、RT-PCR法、qPCR法
遺伝子検査 遺伝子の異常(SNPなど) PCR法、RT-PCR法
画像検査 臓器の状態を確認 レントゲン、MRIなど

(松永、日内会誌 102:1676-1681, 2013)

染色体検査における各手法

Gバンド法は染色体を直接染色する手法で、FISH法は特定の遺伝子配列に結合する蛍光プローブを用いた染色法になります。構造異常や数異常の判定ができますが、前者は精度が低い、後者は偽陽性が起こる問題があります。

近年は臨床においても、特定の遺伝子領域を高感度に検出可能なPCR検査(RNAを鋳型としたRT-PCR)が広く利用されています。

キメラ遺伝子とは

染色体の構造異常の内、ある染色体の一部が切断され、別の染色体由来の一部と相互に入れ替わることを相互転座と言います。白血病においてもっとも代表的な転座染色体はフィラデルフィア(Ph)染色体で、9番染色体のABL遺伝子と22番染色体のBCR遺伝子の間で転座が起こったものです。

〇左図:転座前の染色体と、転座後のPh染色体 右図:BCR-ABL1遺伝子とmRNA、Bcr-Ablタンパクの模式図

転座によってできた遺伝子がキメラ遺伝子(chimeric gene)で、融合遺伝子(fusion gene)、転座遺伝子(translocated gene)とも呼ばれています。キメラ遺伝子により産生されるタンパクは、通常の遺伝子から産生されるものとは異なっており、これらが白血病の発症に関与している場合もあります。フィラデルフィア(Ph)染色体の場合、BCR-ABL遺伝子がつくるBcr-Ablタンパク(チロシンキナーゼ)が、白血病細胞を増殖させることが知られています。

染色体転座、キメラ遺伝子は下記のように表記されます。両者が併記されることもあります。

t(9;22)(q34;q11)

=9番染色体のq34領域と22番染色体のq11領域の相互転座

BCR-ABL1もしくはBCR/ABL1

=BCR遺伝子とABL1遺伝子のキメラ遺伝子

キメラ遺伝子の特長、白血病での重要性

白血病に関連するキメラ遺伝子には、下記のような特長があります。

①様々な遺伝子間で発生する

白血病に関連するキメラ遺伝子は一種類ではなく、様々な遺伝子の組み合わせが存在します。病型や患者の年齢によって検出される種類や割合は変化することがわかっています。小児AMLを対象とした調査では、RUNX1-RUNX1T1の割合がもっとも高くなっています。CMLでは、t(9;22)BCR-ABL1が多く報告されています。

〇JPLSG AML-05(日本小児白血病リンパ腫研究グループ 小児AML)臨床試験における遺伝子異常の種類と割合
(Shiba et al., Blood Advances, 3:3157-3169, 2019)

年齢との関係については、成人のALLではt(9;22)BCR-ABL1が多いですが、小児の場合はt(4;11)MLL-AF4t(12;21)ETV6-RUNX1が多くみられます。

〇ALL患者における年齢別の遺伝子異常の種類と割合
(長藤, 日内会誌 107:1301-1308, 2018)

しかし、割合が少ないから重要ではない、というわけではなく、キメラ遺伝子の種類によっては病状が重い場合や治療が困難になる場合もあります。近年は次世代シーケンサーやマイクロアレイを用いた調査研究の発展により、低頻度、新規転座遺伝子も多数確認されています。国内でも大規模なコホート研究により、世代特異的な変異や、他の遺伝子・薬剤との関係性が報告されています。

白血病に関連する国内の臨床研究グループ(遺伝子関連の研究に限りません)

③同じキメラ遺伝子でもバリエーションがある

同じ遺伝子の転座でも、入れ替わる部分(切断点: breakpoint)が一か所に決まっていない場合があります。

BCR-ABL1キメラ遺伝子の場合、どのエキソン部分に切断点があるかで大きく3種類存在し、それぞれ観察される病型が異なります。

〇BCR遺伝子とABL1遺伝子の転座で作られるキメラ遺伝子と産生されるタンパクの種類

(Laurent et al., Cancer Research, 60:2343-55, 2001)

切断点の箇所(BCR遺伝子) 遺伝子の名称 タンパクの名称 観察される病型
exon 1-2 minor BCR-ABL1 (m-BCR) p190Bcr-Abl おもにALL、AMLでまれにみられる
exon 12-15 major BCR-ABL1 (M-BCR) p210Bcr-Abl おもにCML
exon 19-21 micro BCR-ABL1 (μ-BCR) p230Bcr-Abl ALL、CML、慢性好中球性白血病などでまれにみられる

④他の遺伝子変異と関連する

キメラ遺伝子は、他の遺伝子変異との関連性があることも報告されています。成人AMLの研究では、RUNX1-RUNX1T1やCBFB-MYH11のキメラ遺伝子をもつ患者ではKIT 、FLT3、NRAS 、KRAS遺伝子などに変異が高頻度で起こっていることが示されました。

〇JALSG CBF-AML-209-KIT(JALSG 成人AML)臨床試験における研究結果。RUNX1-RUNX1T1もしくはCBFB-MYH11をもつAMLと関連のある遺伝子変異がラインでつながっている
(Ishikawa et al., Blood Advances, 4:66-75, 2019)

これらの変異遺伝子は細胞増殖にかかわっているため、患者の病状にも影響します。また、治療効果にも大きくかかわっていると考えられます。

⑤予後予測の材料となる

病気の経過の見通しを「予後」と言いますが、白血病の予後に関連する因子には、年齢や合併症の有無の他、遺伝子異常も含まれています。

キメラ遺伝子も予後因子の一つとして重要です。

〇ALL患者における年齢別の遺伝子異常の種類と割合
(長藤, 日内会誌, 107:1301-1308, 2018)

〇AML患者における年齢別の遺伝子異常の種類と割合
(三谷, 日内会誌, 107:1648-1659, 2018)

ALLにおけるTCFのキメラ遺伝子や、AMLにおけるDEK、KMT2Aのキメラ遺伝子など、患者の割合としては低頻度のキメラ遺伝子でも、予後不良が予測されます。発症後の治療計画を立てる上で、キメラ遺伝子と予後の関係を把握することはとても重要です。また、後に述べるMRD(微小残存病変)の検出にも関連します。

⑥分子標的治療薬の対象となる

白血病の治療には化学療法や造血幹細胞移植がありますが、他のがんのように分子標的治療薬も利用されています。イマニチブはBcr-Abl チロシンキナーゼ阻害剤であり、Bcr-Ablタンパクのはたらきを抑えて白血病細胞を減らす効果が期待されます。

タミバロテンはAPLにおけるPML-RARAを標的とし、キメラ遺伝子の働きである分化抑制機能を抑えて分化を誘導するほか、キメラ遺伝子そのものを分解する機能があります。

MRDとキメラ遺伝子検査

治療を開始してからも、キメラ遺伝子の検査は有効である可能性があります。

治療の経過に伴い、白血病細胞は減少するため、顕微鏡観察では検出できなくなります(血液学的完全寛解(CR))。しかし、白血病細胞は0になったわけではなく、治療を中止してしまうと再び発症してしまう可能性があります。一方、RNAを用いる分子学的な検出法では、血液学的CRよりも少ない数の細胞を検出可能です。分子学的な検出限界、分子学的CRと血液学的CRとの間を微小残存病変(MRD)と呼び、患者に合った治療の選択に利用されています。現在はおもにBCR-ABL1遺伝子やPML-RARA遺伝子(APLの場合)を対象とし、フローサイトメトリーやRT-PCRが使われています。

〇微小残存病変 MRDの定義
(長藤, 日内会誌, 107:1301-1308, 2018)

HemaVisionによるキメラ遺伝子スクリーニング

病態を迅速・正確に把握して治療に活かす際や、原因不明だった症例の解明に、キメラ遺伝子の検出は大きくかかわっています。

臨床で行われるキメラ遺伝子のスクリーニング検査に有用な製品が、DNA Diagnositics社HemaVisionシリーズです。本製品はキメラ遺伝子に由来するRNAの逆転写PCR(RT-PCR)を基礎としており、高い検出感度を持ちます。個別のキメラ遺伝子の検出の他、複数種類の遺伝子検出を迅速に行うことも可能です。とくにリアルタイムPCRを利用するHemaVision-Qシリーズは、下記の特長があります。

Hemavision_7Q_28Q.jpg

HemaVision Qシリーズの特長

  • 主なキメラ遺伝子の同時検出が可能(HemaVision-7Q: 7種、28Q:28種)
  • inv(16)など、従来の検査では検出できない遺伝子を検出
  • 低頻度、予後重要な遺伝子もカバー
  • ラボにある一般的なPCR装置と標準的なスキルで使用可能
  • AML/ALLなどの病態や年代に関係なく、幅広いサンプルを適用可能
  • メーカー製造品で安定品質
  • 主要なキメラ遺伝子については詳細なbreakpoint同定キット(HemaVision RT-PCRシリーズ)も展開

HemaVision-28Qのワークフロー

RNAを抽出後、逆転写によりcDNAを合成し、23チューブを使ってqPCRを行います。

HemaVision-28Qで検出可能なキメラ遺伝子

3種のBCR-ABL1遺伝子を個別に評価できるほか、KMT2Aキメラ遺伝子やTCF1キメラ遺伝子など、低頻度あるいは予後不良と予測される遺伝子も検出可能です。
コントロール遺伝子も増幅するため、試験の妥当性も評価できます。

詳細は各製品ページをご覧ください。

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弊社より本製品を利用した受託検査施設等をご紹介可能です。
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