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研究者の声

2018/11/20

ImmunoCultによるヒトT細胞の増殖 研究者の声【7】

  • 用途別細胞培養

ヒトiPS細胞からT細胞を再分化誘導する研究に取り組まれている、矢野寿様(京都大学iPS細胞研究所)に、STEMCELL Technologies社のT細胞の活性化・増殖試薬「ImmunoCult」をご評価いただきました。 プライマリーT細胞の増殖において、PBMC feederに替わる、効率的なfeeder free拡大培養法であることが示されています。

研究者紹介

矢野 寿 様

京都大学iPS細胞研究所 増殖分化機構研究部門 金子研究室

京都大学大学院医学研究科 特別研究学生

名古屋大学大学院医学系研究科 血液・腫瘍内科学 博士課程大学院生

略歴

2012年 名古屋大学医学部医学科 卒業

2016年 名古屋大学大学院医学系研究科博士課程 入学

研究目的・内容

研究目的

iPS細胞を用いたT細胞の再分化誘導による、その分化機構の解明と免疫細胞療法の開発

研究内容

iPS細胞からのT細胞の再分化誘導に取り組んでいる。
T細胞を一度iPS細胞へとリプログラミングし再度T細胞に分化誘導することで、疲弊したT細胞であってもテロメアが再延長し、高度な増殖能を再獲得させられることが知られている(Nishimura T, Kaneko S et al.(2013))。
抗原特異的T細胞をiPS細胞化及び再分化誘導した細胞を用いることにより、免疫の強化として悪性腫瘍やウイルス感染症の免疫療法、逆に免疫の制御として自己免疫疾患の免疫療法の開発を目指している。
この改良の過程で、T細胞分化メカニズムそのものの解明にも寄与する知見が得られることを期待している。

ImmunoCultについて

ImmunoCultをどのようなご実験に使われていますか?

コントロール細胞としてprimary T細胞を用いており、この各サブセットを拡大培養するのに用いている。

ImmunoCultを選択された目的と、理由を教えてください。

添加サイトカインのより厳密な条件設定ができるという点でも、PBMC feederに替わる効率的なfeeder free拡大培養法を求めている。
以前より磁気ビーズが広く使用されているが、これに替わり得る選択肢として採用させていただいた。

ImmunoCultを使うことでどんなメリットがありましたか?

希少分画の場合、拡大培養スタート時の細胞数が非常に少ないことがある。
こうした場合に磁気ビーズをプロトコル通りに細胞数との比に従って用いることは難しい。
これに対して培地に規定の希釈を行えばよいImmunoCultは簡便であり、安定した効果が期待できる。

ImmunoCultの評価結果

CD4+ T cellsの増幅

方法

健常ドナー由来PBMCからCD4陽性T細胞をFACSし、1 well (150 μL)/96 well plateに3000個を播種した。
(サイトカインとして)IL-2 100 IU/mLのみを添加した10% FBS/α-MEMを基本培地とし、培養冒頭のみ1 mL当たり25 μLのImmunoCult Human CD3/CD28 T Cell ActivatorまたはImmunoCult Human CD3/CD28/CD2 T Cell Activatorを加えた。
十分な増殖が認められたらwellの分割を行ったが、この際にはImmunoCultは加えず、基本培地のみで希釈を進めた。

結果

CD2刺激あり(ImmunoCult Human CD3/CD28/CD2 T Cell Activator添加時)の場合、CD2刺激なし(ImmunoCult Human CD3/CD28 T Cell Activator添加時)に比べ、約3倍の細胞数にまで増幅した。

Fig.1 ImmunoCult添加時のCD4+ T細胞増幅

Immunocult添加時のCD4+T細胞増幅.jpg

さらに、CD2刺激ありの場合は有意にクラスター(※)の良好な発達を認めた。
TGFb 5 ng/mL添加により増殖を抑制した場合でも、CD2刺激ありの条件では小さいクラスターが保たれ増殖が維持された。
CD2刺激は、クラスター形成を促し細胞増殖自体も促す効果を示した。

※ 一般にリンパ球の拡大培養では、クラスター発達と増幅倍率(得られる細胞数)が比例する。

Fig.2 ImmunoCult添加時のCD4+ T細胞クラスター発達

Immunocult 添加時のCD4+T細胞クラスター発達.jpg

Naïve CD4+ T cellsの増幅

方法

健常ドナー由来PBMCから、CD4+/CCR7+/CD45RA+のnaïve Th細胞をFACSし、1 well (150 μL) /96 well plateに300個播種した。上記同様の基本培地にImmunoCult Human CD3/CD28 T Cell Activator、ImmunoCult Human CD3/CD28/CD2 T Cell ActivatorおよびT細胞活性化用磁気ビーズ(他社ビーズ)を添加し培養した。ビーズの添加量は、細胞数1に対しビーズ数が4となるようにした。

結果

ImmunoCultを添加した場合、naïve Th細胞が1000倍以上に増幅された。CD2刺激の有無による大きな差異は検出されなかった。

Fig.3 ImmunoCultおよび磁気ビーズ添加時のNaïve CD4+ T細胞増幅

ImmunoCultおよび磁気ビーズ添加時のNaive CD4<sup>+</sup>T細胞増幅.jpg

Table.1 ImmunoCultおよび磁気ビーズ添加時のNaïve CD4+ T細胞増幅

条件 細胞数
Day 0
細胞数
Day 13
拡大倍率
他社ビーズ 300 2.0 x 104 67
ImmunoCult CD3/28 300 3.3 x 105 1100
ImmunoCult CD3/28/2 300 3.5 x 105 1180

考察

CD4陽性T細胞を分画せずbulkで用いた場合、CD2刺激ありの条件(ImmunoCult Human CD3/CD28/CD2 T Cell Activator)で増殖効率が大幅に向上した(Fig.1)。
ヘルパーT細胞の拡大培養では、本製品の使用が有効と考えられる。
また、簡便な希釈操作のみで安定した増幅を得られるImmunoCultは、102~104程度の非常に少ない細胞数からの拡大培養に適している(Fig.3, Table.1)。
磁気ビーズ法で増殖効率が比較的低かったのは、スタート時の細胞数があまりに少なく、ビーズを個数比で添加した際に細胞との接触が十分に確保できなかったためと考えられる。

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