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ラーニングコーナー

2019/11/22

MassARRAYを利用したSNPベースのキメリズム解析-正確で効率的な検査方法の提供-

Agena Bioscience社 商品取扱終了のお知らせ

キメリズム解析は、造血幹細胞を移植した患者の移植後モニタリングのため、広く利用されている手法です。
移植件数および患者の生存率増加に伴い、キメリズム検査のニーズはますます大きくなると思われます。MassARRAY® Systemは、MALDI-TOFベースの質量分析技術を利用したSNP(一塩基多型)解析を行うシステムです。多検体・多遺伝子の検出を迅速に行うことができ、キメリズム解析の新しい手法として利用できます。
このコーナーでは、MassARRAY Systemを用いたキメリズム解析について紹介いたします。

キメリズム解析の重要性

キメリズム解析は、造血幹細胞移植(同種移植)を行ったレシピエント(患者)の血液細胞において、ドナー由来の遺伝子と患者由来の遺伝子の割合(キメリズム%)を決定する検査のことです。移植前は患者由来の細胞しか存在しませんが、移植後はドナーと患者、両者に由来する細胞が混合した状態(混合キメラ)となります。ドナーの細胞が正常に生着すると、ドナー由来の細胞のみとなります(完全キメラ)。ドナーの細胞の割合が増加しないと生着不全となります。また、移植後にほぼドナー由来の細胞になったとしても、その後患者由来の細胞が増え、混合キメラ状態になると再発となります。キメリズム検査で細胞の患者/ドナー割合を経時的に観察することで、生着の状態や再発、腫瘍細胞の有無をモニタリングすることができます。また、移植後に発生する移植片対宿主病(GVHD)などに関連する情報も得ることができるため、移植医療においては非常に重要な検査となります。

キメリズム検査には、おもに遺伝子内の短い反復領域STR(short tandem repeat)をターゲットとした解析(PCR-STR法)が用いられています。しかし、アッセイの準備やデータ解析が煩雑であること、解析に時間がかかることが欠点でした。

移植件数および患者の生存率増加に伴い、キメリズム検査のニーズはますます大きくなると思われます。このため、STRベースの手法ではなく、多検体に対応でき、かつサンプル準備~レポート取得まで簡便に行える手法が必要となっています。

<STRベースの手法によるキメリズム解析>

ドナーと患者で遺伝子断片のパターンが異なる領域に注目し、移植後に検出されるパターンとのその割合から、キメリズム%を算出します。STRベースの解析はデータの取得までに時間がかかるという欠点があります。

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MassARRAYを利用したキメリズム解析

MassARRAY Systemは、STRベースではなく、MALDI-TOFの質量分析技術を利用してSNP(一塩基多型)解析を行うシステムです。アッセイはAgena社が開発したChimeric ID Panelを用いて行います。このパネルはHapMap集団(ASW, CEU, CHB, GIH, JPN, MEX)においてマイナーアレル頻度(MAF)が45-55%である、92のSNP(連鎖不平衡が存在しないもの)を決定することが可能です。本パネルのSNP数は様々なドナー/患者の組み合わせにおいて、関連する個人と無関係の個人を比較するのに十分な情報を有します。92のSNPのうち、有益なデータが得られたSNPの解析結果から、ドナーと患者サンプルのアレル頻度を検出します。

1回のランで、最大24検体(96wellプレートの場合)、または96検体(384wellプレートの場合)が解析可能です。さらに、ハンズオンは約30分、全体でも解析時間は約9時間で終了するため、多検体を最小限の労力で解析することができます。

得られたSNPデータはソフトウェアで自動的に解析され、移植前のドナー/患者情報や有益なSNPデータを元に、移植後の患者サンプルにおけるキメラ状態(ドナー/患者割合)を算出し、結果をレポート形式で出力します。

 <MassARRAY Systemの特長>

  • 高い正確性と再現性
  • 低濃度~高濃度のDNAでも解析可能 -> ラボワークの短縮、低コスト解析の実現
  • 解析結果の自動作成、取得

<キメリズム検査におけるMassARRAY Systemのポジション>

PCR-STR MassARRAY System
解析可能な変異・SNP数 ~数10

92

同時解析可能なサンプル数 1~16*

最大24(96well)、96(384well)

解析にかかる時間(全体) 数日

約9時間

*Applied Biosystems 3130xl Genetic Analyzerの場合

<MassARRAY System外観>

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MassARRAY Systemの詳細は、製品ページおよびこちらをご確認ください。

<結果のレポート例>

解析データはレポート形式に自動で変換することができます。各検体におけるキメリズムの割合が簡便に確認できます。以前のデータとの比較も可能です。

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以下はAgena社と協力機関によって行われた検証試験の結果です。一部のデータを許可を得て掲載しています。

Chimeric ID Panelを用いた検証試験

男性、女性各1名のDNA(移植前を想定)、および両者を任意に混合したDNA(移植後のキメラ状態を想定)を利用し、Chimeric ID Panelを用いた解析を行いました。解析結果から得られた実測値(=キメリズム%)は、同じ混合物中のX/Y染色体コピー数を、ddPCRを用いて計測した値(理論値)と比較しました。

高い正確性

キメリズム%が3、5、10、15、25、30、45%の希釈系列を2系列作成しました。各系列8反復で解析を行ったところ、理論値との平均分散値0.8%、中央値の分散が0.48%となり、理論値と強い相関が得られました。異なる3施設で同一サンプルを解析した試験でも、理論値と強い相関が得られ、高い正確性が示されました。

<実測値と理論値との相関>

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良好な再現性

キメリズム%が3-50%の希釈系列を2系列作成しました。各系列8反復で解析を行ったところ、全体の標準偏差は0.65%でした。これはChimeric ID Panelを用いた解析の良好な再現性を示しています。

<各混合サンプルにおける再現性>

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低い検出限界

キメリズム%が1、2、3、5%の希釈系列を作成しました。各混合率で12反復で解析を行ったところ、「キメラ陽性」と判断されたサンプルの割合は、キメリズム%が1%で16.7%、2%で83.3%、3%で100%となりました。

本パネルを用いた検出限界は約3%であることが示されました。

<各混合サンプルにおけるキメラ陽性の割合>

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低濃度・高濃度のDNAでも解析可能

キメリズム%が2、6、12%の希釈系列を作成しました。さらに各混合サンプルにおいて、初期DNA量を2 ng、10 ng、100 ng、200 ngに調整しました。いずれのDNA量においても、良好な再現性と正確性が得られました。STR―PCR法では最適な初期DNA濃度の幅が狭いため、検体ごとのDNA希釈や、シーケンサーへの再導入が必要です。MassARRAY Systemでは対応できる初期DNA濃度の幅が広いため、希釈せずに実験を開始でき、どの濃度でも同精度の結果を得ることが可能です。

<初期DNA濃度の異なるサンプルの解析結果>

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STR法と同等のパフォーマンス

キメリズム%が5、10、15、20、25%のサンプルを2系列用意しました。すべてのサンプルで、STRベースの手法および、Chimeric ID Panelを用いた解析を行いました。その結果、両手法の結果は非常に似たものとなりました。別の試験でも両者の結果は類似し、解析を行った検査機関で基準としている標準偏差±2.5の範囲内にすべて収まりました。

Chimeric ID panelを用いたキメリズム解析は、従来のSTRベースの解析と同等のパフォーマンスを示しました。このため、キメリズム検査をSTRベースの解析からChimeric ID Panelを用いた解析にシフトしても、再解析は必要なく、以前の結果を用いることが可能です。

<STR法との比較>

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キメリズム解析はMassARRAYで!

Chimeric ID Panelを用いたキメリズム解析は、従来のSTRベースの方法と同等のパフォーマンスを持ちつつ、ラボワークの効率化が行える優れたアプリケーションです。

とくに多検体をルーチンで解析する場合に力を発揮します!

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