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ラーニングコーナー

2019/11/22

MassARRAYを利用したPGx解析-低コストで有益なデータの取得-

Agena Bioscience社 商品取扱終了のお知らせ

PGx(Pharmacogenomics:薬理ゲノム学)は、医薬品の作用と、ヒトの薬物代謝関連遺伝子の変異との関連を研究する学問領域です。MassARRAY® Systemは、MALDI-TOFベースの質量分析技術を利用してSNP(一塩基多型)およびCNV(コピー数変異)解析を行うシステムです。多検体・多遺伝子の検出を迅速に行うことができ、PGx解析の新しい手法として利用できます。
このコーナーでは、MassARRAY Systemを用いたPGx解析について紹介いたします。

PGxとは

ヒトのゲノムが解読されて以降、ゲノム情報・遺伝子情報を利用し、創薬や疾病発生のメカニズム解明などが行われてきました。現在は、個人に適切な投薬・処置を行うオーダーメイド医療の実現を目指し、ゲノム情報・遺伝子情報を用いた研究が進められています。PGx(Pharmacogenomics:薬理ゲノム学)は、医薬品の作用と、ヒトの薬物代謝関連遺伝子の変異との関連を研究する学問領域で、オーダーメイド医療の実現に重要な役割を持っています。

PGxの対象は、生殖細胞系列変異と、体細胞変異の2種です。

生殖細胞系列変異(germline mutation) 体細胞変異(somatic mutation)
概要

親から子に伝わる遺伝学的な変異

共通性(個人の中ではすべて同じ変異)

不変性(一生変化しない)

腫瘍細胞など、病変部位の変異

一部の細胞にのみ見られる

医薬品-遺伝子の例 コデイン-CYP2D6
イリノテカン-UGT1A1
クロピドグレル- CYP2C19
イマニチブ(グリベック)-Bre-AbI
ゲフィニチブ(イレッサ)-EGFR
セツキシマブ-KRAS
医薬品による副作用の例 イリノテカン(吐き気、血液障害など)
コデイン(過剰な呼吸抑制)
応用分野 遺伝カウンセリング、投薬量の調整など 疾病バイオマーカー、治療薬のターゲットなど

とくに生殖細胞系列変異のPGx情報は、個人に有効な薬剤・投与量の選択や、副作用のある薬剤の除去、特定の疾病に効果のある薬剤の開発などにつながる有益なデータです。海外では、薬物とマーカー遺伝子の組み合わせが、臨床薬理遺伝学実装コンソーシアム(CPIC)、アメリカ食品医薬品局(FDA)、PharmGKB等でエビデンスレベルとともにリスト化されており、臨床試験でもPGx試験が実施されています。国内でもPGx検査の体制構築や運用が行われてきています。

これまでPGx研究は主にNGSやマイクロアレイを利用した解析が行われてきました。 これらの機器は網羅的な解析に有効である一方、解析に時間がかかる、データの処理が煩雑などの問題があります。

MassARRAY Ststemについて

MassARRAY Systemは、MALDI-TOFの質量分析技術を利用してSNP(一塩基多型)およびCNV解析を行うシステムです。Agena社でデザイン済みのパネル(下記)を用いることで、PGx関連遺伝子の変異を簡便に検出することが可能です。CNV検出可能なパネルでは、コピー数の変異を解析できるほか、ハイブリッドアレル(機能していない遺伝子コピー)についても解析することが可能です。

初期DNAはわずか10 ng(5-50 ngの範囲で使用可能)です。

マルチプレックスPCRにより、1ウェルで複数変異を検出できます。さらにSpectroCHIP®を使って複数検体のデータを1ランで取得可能です。ハンズオンは約30分、全体でも解析時間は約9時間で終了するため、多検体を最小限の労力で解析することができます。 得られたSNPデータはソフトウェアで自動的に解析され、結果をレポート形式で出力します。  

<MassARRAY Systemの特長>

  • 高い正確性と再現性
  • 低濃度~高濃度のDNAでも解析可能 -> ラボワークの短縮、低コスト解析の実現
  • 解析結果の自動作成、取得

<MassARRAY® System外観>

image010.jpg

<MassARRAY® Systemのポジション>

qPCR MassARRAY® System NGS system
1ランで解析可能な遺伝子変異・SNP数(サンプルあたり) 1~

数10~数100

数1000~
同時解析可能なサンプル数 1~

最大192(96well)、768(384well)

最大336*
解析にかかる時間(全体) 約3時間

約9時間

約2日
バイオインフォマティクス解析 不要 不要 必要
アプリケーション 単一変異・CNVの解析 複数変異・CNVの解析 大規模変異解析

*illumina社Hiseqの場合

MassARRAY Systemの詳細は、製品ページおよびこちらをご確認ください。

デザイン済みパネルでターゲット遺伝子の変異を検出

Agena社では、PGx検査、とくに生殖細胞系列変異の解析に最適な、デザイン済み変異検出パネルを販売しています。

詳細は個別製品ページおよび製品お問合せをご利用ください。

〇メインパネル VeriDoseシリーズ

    20遺伝子中の68 SNPsとCYP2D6遺伝子のCNVを解析

    ・従来のPGx74パネルよりもSNP検出が確実に:PCR増幅プライマーの改良、パネルデザインの修正

    ・低品質のDNAからの検出感度増加

<従来パネルとの比較>

同じサンプルをVeriDose Core Panel(左)とPGx74 Panel(右)で解析し、あるSNPの結果についてプロットした例。このSNPはサンプルにより、従来のPGx74 Panelで検出できないことがありました(赤のNo Call)が、VeriDose Core Panelでは問題なく検出できています。

PGx_SNP.jpg

    CYP2D6遺伝子のCNVを解析

    ・ハイブリッドアレルの検出が可能に

<ハイブリッドアレルについて>

以下のアレルは、遺伝子コピーとして存在しますが、遺伝子としての機能はありません。

VeriDose CNVパネルでは、これらのアレルを検出できるため、「実際機能している」遺伝子コピー数を算出します。これにより、PGxデータをより高精度に取得できます。

allele.jpg
  • Complete VeriDose Core & CNV Combo

    VeriDose Core Panelで検出可能なSNPと、VeriDose CYP2D6 CNV Panelで検出可能なCNVが両方解析できるセットです。

〇その他のパネル:詳細はお問合せください。

  • PGx74 Panel
  • CYP2D6 Panel
  • CYP2C19 Panel
  • CYP2C9/VKORC1 Panel
  • UGT1A1 Panel

解析結果例

MassARRAY Systemでは、解析データをTyper Softwareで自動変換し、様々な形式でデータ表示を行えます。

・図表(個別遺伝子のMSスペクトル、SNP判定など)

・グラフ形式(クラスター解析など)

・自動エラーチェック

・レポート形式への変換機能

report1.jpg

※ハイブリッドアレル検出可能なパネルでは、計測された遺伝子コピー数が「CNV」、機能している遺伝子コピー数が「CNV Functional Outcome」として表されます。

report2.jpg

MassARRAY Systemを用いた低コストで高精度なPGx解析を活用することで、オーダーメイド医療へ向けた基盤技術の進展が期待できます。

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