研究者の声
2026/01/26
免疫賦活性DNA分子スクリーニングに向けた免疫沈降法の応用 研究者の声【47】
- 創薬支援
免疫沈降による標的タンパク質精製は、様々な研究における重要なステップです。今回ご紹介する順天堂大学の星 和明先生は、新製品であるDynaGreenと同社同等品を用いて、TLR9に対する結合能を比較してくださいました。実際の使用例から、新製品のメリットをご紹介いたします。
研究者紹介
順天堂大学 健康総合科学先端研究機構
特任助教
※ 所属や役職等は掲載当時のものです
研究目的
自然免疫受容体に作用するリガンドは免疫賦活薬や抗炎症薬のシード化合物になり得る。トール様受容9(TLR9)は病原体DNAを認識する自然免疫受容体であり、受容体下流のシグナルは自然免疫応答に関わるサイトカインや共刺激分子の発現を誘導する。病原体DNAを人工的に合成したTLR9リガンドはCpGオリゴと呼ばれ、ワクチンに添加される免疫賦活剤(アジュバント)として臨床応用されている。TLR9リガンドとして機能するDNA分子の立体構造は受容体との相互作用を変化させ、誘導シグナルに影響する1, 2)。したがって、DNAリガンドとTLR9との相互作用解析は創薬プロセスに重要である。筆者らは既報告において、同社同等品を用いた免疫沈降(IP)を行い、設計DNA分子のTLR9に対する結合能を評価している1)。本報告ではDynaGreen™ Protein A/G Magnetic Beadsと同社同等品を用いて同条件下におけるIPを行い、TLR9リガンドのスクリーニングにおけるDynaGreen™ Protein A/G Magnetic Beadsの有用性を調べた。
- A.T.T. Tu, K. Hoshi, K. Ikebukuro, N. Hanagata, T. Yamazaki, Monomeric G-Quadruplex-Based CpG Oligodeoxynucleotides as Potent Toll-Like Receptor 9 Agonists, Biomacromolecules 21(9) (2020) 3644-3657.
- K. Hoshi, Prediction of a structural change in the orientation of the cytoplasmic signaling unit of human Toll-like receptor 9 upon binding of agonistic and antagonistic DNA molecules, J Struct Biol 217(4) (2025) 108252.
方法及び材料
IPには磁気ビーズ(同社同等品もしくはDynaGreen Protein A/Gビーズ)、マウスTLR9とFc領域のキメラタンパク質(mTLR9-Fc、R&D SYSTEMS, MN,USA)、クラスA型のTLR9リガンドに分類されるODN2216(InvivoGen, CA, USA)を用いた(図1)。磁気ビーズとの反応時間や洗浄、溶出については標準プロトコルに従った。50 µL 同社同等品もしくは25 µL DynaGreenビーズ表面を5 µg mTLR9-Fcで被覆し、400 pmol ODN2216と混合した。磁気ビーズから溶出したサンプルのmTLR9-Fc及びODN2216含有量はポリアクリルアミドゲル(PAGE)及びSDS-PAGEで解析した。
結果
ポリアクリルアミドゲル内のODN2216(20 mer)及びその凝集体とみられるバンドをImage Jを用いて定量した(図2A,B)。DynaGreen Protein A/GビーズをIPに用いた場合、同社同等品よりも溶出サンプルに含まれるODN2216量が多かった。同溶出サンプルのmTLR9-Fc含有量も増加した(図2C)。DynaGreen Protein A/GビーズをIPに用いた場合、磁気ビーズ表面に対するmTLR9-Fc被覆量が増加した。磁気ビーズへの被覆タンパク質量の増加が結果としてmTLR9-Fcに結合するODN2216量を増加させた(図2)。
感想
・磁気ビーズに対するmTLR9-Fc被覆量の増加は、TLR9に対して弱い相互作用で結合するリガンドの評価などに有用と考えられる。
今後の展望
新たな感染症への対策としてワクチン開発は欠かせない。ワクチンの効果を決める要素として抗原に加え、その添加物であるアジュバントの物性が重要となる。アルミニウム塩を主とするアジュバント(アラム)は現在多くのワクチンで使用されており、その安全性や免疫賦活能に対する知見が蓄積されている。しかしながら、アラムに含まれる金属元素と副作用との関連性に対する懸念や抗原との組み合わせによっては十分にワクチン効果を増強できない例もある。したがって、アジュバントの新規開発はワクチン開発と並行して重要な課題である。TLR9は特定のDNA分子に結合し、アジュバントとして重要な自然免疫応答を誘導する。本評価が示したDynaGreenビーズを用いた免疫沈降法は免疫賦活性DNA分子のスクリーニングに有用と考えられる。


