研究者の声

2020/07/22

分子間相互作用の変化を捉える! 研究者の声【22】

  • タンパク・核酸発現解析

神戸大学大学院保健学研究科の駒井先生とVERI+CLUBにご入会いただいたことをきっかけにお話しをさせていただきました。今回、その際お聞きしたDynabeadsを用いて得られた研究成果について記事にいたしました。
Dynabeadsは、タンパクータンパク相互作用を見る手法のひとつである共免疫沈降(CoIP)において皆様から圧倒的な支持を得ています。

【研究者紹介】

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神戸大学大学院保健学研究科 病態解析学領域 細胞機能・構造科学分野

PI准教授 駒井浩一郎

<経歴>
1990年筑波大学第二学群生物学類卒業、同大学院環境科学研究科修了後、
住友化学工業(株)生物環境科学研究所研究員を経て1998年神戸大学医学部保健学科助手、
2009年同大学院保健学研究科准教授、2012年より生命情報発現学駒井研究室主宰、現在に至る。

<紹介論文>
Yumi Suganuma, Hayate Tanaka, Aya Kawase, Aoi Kishida, Moeko Yamaguchi, Atsuko Yabuuchi, Koji Inoue, Shunichi Shiozawa, and Koichiro Komai: Expression of a PYCARD/ASC Variant Lacking Exon 2 in Japanese Patients With Palindromic Rheumatism Increases interleukin-1β Secretion. Asian Pac J Allergy Immunol, doi: 10.12932/AP-040319-0509. Online ahead of print. (2019)

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31421660/

【論文紹介】

アルツハイマー病などの認知症や感染症、また痛風、脂肪肝や動脈硬化等各種の生活習慣病などは各疾患の原因物質である危険シグナルを細胞内に伝達する様々な「インフラマソームタンパク質複合体」の機能変調による「自己炎症性疾患」として近年認識されつつあります(図1)。 

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(図1) インフラマソームは種々の危険シグナルを細胞内に伝えるタンパク質複合体である


 一方、回帰性リウマチpalindromic rheumatism (PR) は関節あるいは関節周囲の炎症を示し、その発作が不定期間隔で繰り返すことを特徴とする疾患です。疾患原因は不明ですが、代表的な自己炎症性疾患である、家族性地中海熱のバリエーションである可能性を指摘する意見もあり、PR患者でもインフラマソーム機能異常が生じている可能性が考えられました。

 そこで本論文では様々なインフラマソームの共通構成分子であるPYCARD/ASC (PYD and CARD domain containing/ Apoptosis-associated speck-like protein containing a CARD) (以後ASC)に着目して検討を行った結果、ASCエクソン2脱落型スプライスバリアント(Δexon2 ASC)が日本人PR患者において優位に発現していることを見出しました(図2)。

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(図2)健常者および回帰性リウマチ (PR)患者における全血RNA由来ASC遺伝子のRT-PCR


そこでリコンビナントΔexon2 ASCまたは野生型ASCを発現させたTHP-1細胞を用いてPMA/MSU刺激時のIL-1β産生量を比較した結果、Δexon2 ASC発現細胞におけるIL-1βは野生型と比較して有意に増大していました(図3)。

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(図3)野生型(WT)ASCおよびexon2欠失型バリアント(Δexon2)発現THP-1細胞におけるIL-1β産生量 *P <0.05


さらにΔexon2 ASCまたは野生型ASCと、インフラマソームを構成するNLRP3やCaspase-1との結合性を共免疫沈降法により比較した結果、Δexon2 ASCはNLRP3との結合性が野生型と比較して増大していることが明らかになりました(図4)。

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(図4)野生型(WT)ASCおよびexon2欠失型バリアント(Δexon2)とNLRP3またはCaspase-1との共免疫沈降による相互作用解析

Δexon2 ASCは回帰性リウマチ患者以外でも発現していることを確認しています。インフラマソーム構成タンパク質のうち、危険因子の受容分子はNLRP1, NLRP3, AIM2など複数が明らかにされていますが、イフェクターであるCaspase-1に活性化シグナルを伝えるアダプターはASCしか見出されていません。つまりASC の機能異常は幅広い自己炎症性疾患の病態形成機構へ関与すると考えられるため、今後はバリアントASCのさらに詳細な機能解析とバリアント産生機序の解明を行い、様々な自己炎症性疾患に共通する病態形成機構を明らかにしていきたいと考えています。

【Dynabeadsの活用事例】

リコンビナントΔexon2 /野生型ASCを発現させたTHP-1細胞を用いて内在性のNLRP3またはCaspase-1との相互作用を調べるため、Dynabeads Protein G Immunoprecipitation Kit (DB10007)を共免疫沈降法に使用しました。その結果Δexon2 ASCはNLRP3との結合性が野生型と比較して増大していることが明らかになりました。

【Dynabeadsを選んだ理由と目的】

かつては免疫沈降にsepharose結合のProtein A/Gを使用していましたが、洗浄操作の途中でロスが避けられないことが難点でした。その点Dynabeadsはマグネットを使用する手軽さや多くの論文で使用されている実績もあることから導入しました。

【Dynabeadsを使用しての感想】

簡便かつ短時間に実験できました。技術的な個人差があっても結果に影響が出ない程に操作が簡単なので、若手研究者でも再現性のあるデータを出すことができると思いました。また試供品やマグネットのサービス供与など、初めて使用するユーザにフレンドリーなところも導入しやすい点だと思います。現在別の実験でもDynabeadsを使用していますが、また新しい発見ができることを期待しています。

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